よくある間違いだらけのAIの誤解5選!「自分の仕事にAIは関係ない」という残念な勘違い
こんにちは!PA Labメディアです。
AI導入を行なうプロジェクトの多くの場合は実装担当者とクライアントの間でのコミュニケーションがとても重要になってきます。いわゆるシステム開発においても同様のコミュニケーションは非常に大切ですが、普通のシステム開発とも違う独特な観点が多く、一般的なシステム開発よりもコミュニケーションが重要になってきます。
今回の記事では以下のような方を対象にしております。
- 「AIプロジェクトの外注をする予定だが、相場が分からない」
- 「社内でデータサイエンティストの育成を検討している」
- 「AIは自分の業界には関係ない」
そこで今回の記事ではよくあるAIの誤解5選というタイトルで紹介していきます。
目次
よくあるAIの誤解(1) AIは大企業だけの技術
グーグルのCEOのサンダー・ピチャイやスタンフォード大学の教授のアンドリュー・ンらは電気や火とAIを比較してその重要さを伝えています。つまり、電気や火のような根本的なインフラと比較する程度にはAIそのものがインフラとして重要になっていく、という事を述べています。
もちろん最先端のAI研究を行っているのはGoogleやFacebookのような大企業ですが、もはやAIはコモディティ化してきており様々なクラウドサービスやライブラリとして登場しています。中小企業は大企業のような研究開発のコストをかけずとも使用する事が出来るので、正しいデータ活用・AIの活用を行なう事で事業を圧倒的に成長させることが出来るチャンスになります。
GPUなど深層学習を行なうために必要なハードウェアリソースは今やクラウドで簡単に使用することが出来るし、オンプレの環境であってもデータ分析を行なうためのプラットフォームはAWSやGCPなどのクラウドベンダーがすでに用意をしていて、BIツールやSaaSなども充実してきている今スモールスタートで始めるAI導入コストは高くありません。
AIやデータ分析に精通している人材が足りていない、という点は共通した事実ですが、AIはインフラ化していくという点を踏まえると、早めに社内でAI人材を教育する事が重要になっていきます。
よくあるAIの誤解(2) AIは自分の業界には関係ない
「アナログな業界でAI導入は全く関係」という誤解もよくある誤解の一つです。
例えばアナログな業界へのAI導入の成功例として、インドのユニコーン企業OYOの圧倒的な成長が最も分かりやすいです。
OYOは創業して6年で世界80カ国に110万室を保有して世界2位のホテルチェーンとなった企業で評価額はすでに100億ドル以上になっていますが、この圧倒的な売上を支えているのがOYOのAIを活用したホテル経営です。
ホテル業界はAirbnbなどを除けば元々AI導入が遅れている業界ですが、OYOはデータサイエンティストの採用に力を入れており、部屋の稼働率を最大化するようなAIや契約を最大効率化するようなAIを自前で作成することで徹底的にコスト削減・圧倒的な時間短縮を実現して成功しています。
先端の大企業で行われている革新的なAIの研究をしなくても、ある程度正しいアプローチをアナログな業界に向けて行えば費用対効果の高い投資を行なう事が出来ます。特にアナログな業界であればあるほど最適化の伸びしろが高く、最近では本当に多様な業界でAIが導入されています。変わった所では日本酒や工芸品などの伝統工業のような分野でも跡取り問題などの問題があり、費用対効果の面でAI導入が行われている例が増えてきています。
よくあるAIの誤解(3) 開発コストを懸念していない
次の項目の「課題がそもそも分かっていない」という所にもつながっていきますが、費用対効果がわからないままプロジェクトを進めている例も非常に多く見られます。「AIによってどんなことがどの程度の費用で出来るか」という事が理解できていない事による誤解です。
例えば、「コモデティ化されたAIの活用」と「研究費を莫大にかけた上で実現するAIの応用」の違いが最も分かりやすい開発コストの認識の違いになります。より具体例を上げると「GCPのVision APIを組み合わせた画像分類を導入したシステム開発」と「TikTokやSnowのようなフィルター機能を実現してアプリに組み込みたい」という例になります。
一般的なシステム開発よりも機械学習が関連したプロジェクトの方が高価になるのはどちらも同じですが、前者と後者では全くかかってくる費用が違います。例えば後者の機能は一見アプリに導入されており簡単そうに見えますが、実際にはByteDance(TitTokの運営会社)は莫大な研究費用をかけコンピュータービジョンの研究を行った上で機能をリリースしています。ByteDanceが莫大な研究費用をかけているのは勿論マネタイズすることが出来て将来的に価値が出るから行なう事が出来ているのですが、果たして同等の金額をつぎ込んでマネタイズ出来る戦略があるのか、というのが分かっていないケースもよく見られます。
このような例もAIプロジェクトに関して具体的な工程の概要がつかめていないと起きるすれ違いの原因になります。これを解決するためにも少なくともデータ分析のプロジェクトを推進出来るような外注を行なう事ができる有識者を社内で育てておくか、技術アドバイザーとして早めの段階で入れておく事が重要になっていきます。
よくあるAIの誤解(4) 課題がそもそも分かっていない
課題がそもそもよく分かっておらず、「データは大量にあるので、とにかく分析してほしい」というパターンもよく見られます。
まっとうなデータサイエンティストがいれば「課題の整理」、「評価指標の設計」などは必ず実施していきますが、その一方でデータサイエンティストの教育は非常に難しく、データ分析のスクールで学んでいても実データの経験がないと、「データ分析」を行なうための土台作りの「データ分析基盤構築」や「前処理」のような別プロセスで非常に苦労することになります。
また世の中の多くのAIプロジェクトの場合はそもそもデータ分析が未経験だが会社の上司に言われてスタートしているようなプロジェクトが多く、課題が分からないままプロジェクトを進めてしまっていたり、統計的には誤っているプロセスのまま進めてしまい統計的に全く意味のないプロジェクトなども沢山見られます。中途半端に人件費をかけたのに、全く成果が出ずにAI導入のプロジェクトが頓挫していくパターンですね。
勿論蓄積されているデータは重要だが、データの前処理の重要性を理解せず課題がわからないまま進める事は非常に時間のロスが大きく、少なくとも最初の段階には必ずデータ分析の知見がある有識者を入れておく必要がある。
よくあるAIの誤解(5) 機械学習モデルの構築がメインの作業
今までの例は大体データサイエンティスト初心者もしくは未経験の方のよくある誤解でしたが、最後の例は機械学習や統計をかじったことがあるデータサイエンティストに多く見られる誤解を上げておきます。
実際のAIを扱うプロジェクトでは仮説検証サイクルやPoC(概念実証)と呼ばれるプロセスが非常に大切になります。
そのため、上にも上げたような「データ基盤構築設計」や「データの前処理」、「評価指標設計」、「課題の整理」などのプロセスを理解しないまま、「機械学習モデルの構築」というプロセスに焦点を当てがちになってしまいます。
多くのAIの本やスクール、講義ではモデル自体に焦点を当てている説明が多いですが、整備されていない実データを扱ったプロジェクトの経験がないと、なかなかこれらのプロセスに焦点を当てる事が難しいのが現状です。大体のプロジェクトでは「機械学習モデルの構築」という一見メインに見える部分にそこまでリソースを割く事が出来ません。
ただし、これは「機械学習モデルの構築」の重要性が薄いという事ではなくて、「適切なアプローチを選択した上でどの程度の精度妥協を行なうか」という事になります。つまり、「0→10」にするプロセスは非常に有意義ですが、「10→20」にするプロセスは多くの場合中小企業ではそこまで重要ではない、ということです。
補足をしておくと、勿論アドテクノロジー(広告配信の最適化のシステム)のような直接収入に関わる機械学習のプロジェクトであれば、「10→11」にするプロセスが非常に重要になってきますし、Youtubeのアルゴリズムのように大規模プロジェクトや医療系の機械学習で人名にかかわるようなプロジェクトであれば「10→10.1」にするプロセスですらとても価値が出てくるため、大企業は膨大な研究費用をかけて改善を行っています。
まとめ
今回はコラムという形で「よくある間違いだらけのAI認識」に関して紹介していきました。
最後に簡単にまとめていきます。
- AIは大企業だけの技術ではなく、クラウドやライブラリとしてコモデティ化してきた今は中小企業の方が費用対効果が高い
- AIはアナログな業界ほど最適化の伸びしろがあり、多様な業界内でインフラとして今後標準の知識になっていく
- AIの知識がないことで開発コストの見積もりが出来ないケースが多いので、早めにAI人材を教育していく
- 課題やそもそも分かっていないケースも多く、中途半端に人件費をかけたのに頓挫するケースも多い
- 中小企業の多くは機械学習モデル構築で「0→10」にするプロセスが重要で「10→20」は必要ないケースが多い
PA Labでは「AIを用いた自動化×サービス開発」の専門家として活動をしています。高度なデータ分析からシステム開発まで一貫したサービス提供を行っており、特に機械学習やディープラーニングを中心としたビジネス促進を得意としております。
無料で分析設計/データ活用に関するご相談も実施中なので、ご相談があればお問い合わせまで。
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